この本や『日本はもはや「後進国」』など、日本経済が既に先進国のモノとは言えないようになっていることを喝破し当初は訝しがられながらも、次第にその説の正しさが受け入れられるようになり、最近はワイドショーの経済専門家としてコメントを求められるようになっている加谷さんの出世作とも言える本を紹介します。
最近は、不承不承ながら日本経済が世界トップレベルとは言えなくなってきているということを認める人が徐々に増えてきてはいるようですが、まだまだ「ジャパン・アズ・No.1」の頃の幻想にしがみつく人は少なからずおられるようで、当初加谷さんの著書はかなりのバッシングを以って受け入れられたようです。
ただ、この本で語られている内容というのは、国際的かつ客観的な統計に基づくモノであったり、かなりシンプルな経済理論に基づくモノだったりすることもあり、どこか経済状態を“盛ろう”とするような御用経済学者の似非理論とは一線を画すものであり、我々の経済感覚とも矛盾しないモノだったりします。
さらに状況としてキビシいのは、この本ではコロナ禍を受けての不況下の物価上昇までしかカバーされていないのですが、その後のロシアのウクライナ侵攻によるコスト状況に起因するインフレが、不況から立ち直り切っていない日本に致命的なダメージを与える可能性があることも伺え、かなり危機的な状況を迎えかねないことを覚悟しておくべきなのかも知れません。
しかも、昭和の大量生産モデルから脱却できない多くの日本企業がこの危機に対応するための処方箋を持ち合わせているとは思えず、来るべき苦境が、まだまだトバ口に過ぎないということも語られています。
ちなみにこの本では物価と金利、為替との関連を経済の前提知識がほとんどなくても、かなり理解しやすいように丁寧に語られており、経済の基礎知識を養う上でも格好のテキストとなりますので、日本経済に何らかの関心のある方は、怯まずに是非是非一読してもらいたい一冊です。