撤退論/内田樹編

 

 

 『日本辺境論』などで知られる思想家の内田樹さんが名だたる論客に「撤退」をテーマにした論述を依頼したモノを集めた本です。

 

 『失われたx0年』がいつまで続くんだ!?と言っているウチに、グローバル経済に波に取り残されて日本の経済状況がOECD諸国の中で底辺を這うような状況になって、追い打ちをかけるようにコロナ禍とロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高で経済的な閉塞感がハンパない状況ではありますが、そう感じるのってただただ日本人の多くが経済成長の幻想を抱き続けているからじゃないの!?ということで、「撤退」といってしまうと敗北感を感じる人も少なくないかもしれないんで、ちょっと疲れたからスローダウンみたいなことは誰にでも起こりうることで、日本社会もそういう局面にあるんだと思えばいいんじゃないの!?とこの本を読んでいると感じます。

 

 ましてや、この本にも論者として登場する斎藤幸平さんが『人新世の「資本論」』で語られていたように、地球環境自体が無限の経済拡大に耐え切れなくなってきている昨今、地球規模でのスローダウンも喫緊の課題であることですし、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を機に、経済の在り方を身近なところから見直す必要があるという重要な提言集だと言えると思います。

 

 ただ、日本人って太平洋戦争を始め、色んな所で露呈しているように出口戦略を描くのがヘタなんよねぇ…