日本辺境論/内田樹

 

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

 

 

 先日『常識的で何か問題でも? 反文学的時代のマインドセット (朝日新書)』を紹介した内田さんの出席作である著書を手に取ってみました。

 出版した当時から「日本が辺境とは何事だ!?」みたいな意見があったことをなんとなく覚えていますが、日本史の教育の中ではあまり強調されませんが、少なくともカタチとしては中国のそれぞれの時期の王朝に臣下の礼をとっていたということで、中国から見れば間違いなく“辺境”だったはずです。

 ただそういう形式論的なことだけではなく、“辺境”であることが日本人の思考自体に大きな影響を及ぼしているです。

 というのもアメリカ人とかだと自身のアイデンティティを明確に語ろうとしますが、日本人はそもそも自身がどういうものなのかということを他者との比較でしか語ることができず、常に他国からどう見られているのかを気にするのはそういうところから来ているようです。

 その後、仰ぎ見るべき“中心”が中国から欧米へと移るのですが、ホンの一時期カン違いしたことを除けば、日本人の“辺境”性は一貫したモノであったようです。

 日本語が“辺境”であることを補強してきた側面や“辺境”であるが故に享受してきたモノがあることなども紹介されていて、いちいちナットクの内容で見事な日本人論だと言えると思います。