人はどう老いるのか/久坂部羊

 

 

 以前、『人はどう死ぬのか』を紹介した元医師で作家の久坂部羊さんの『人はどう死ぬのか』の続編的な著書です。

 

 久坂部さん自身、高齢者医療クリニックでの勤務経験があるということで、この本の前半で認知症患者と向き合った経験を語られているのですが、暴れだす患者や何かとキレる患者に対し、久坂部さん自身がブチギレ寸前になり看護師に止められて事なきを得た経験を語られていますが、経験豊かな医師がついついキレてしまいそうになるほど壮絶な現場のようです。

 

 後半は『人はどう死ぬのか』と被る部分が多いのですが、やはり日本の医療というのは「やりすぎ」の傾向が強く、どうしても「あきらめる」ことを勧めると、患者本人よりも家族から医療放棄的な非難を浴びる可能性が高い様で、ついついそういうことを言い出すことを躊躇してしまうことが多い様で、単なる延命治療で無用に患者を苦しめる結果になることをわかっていながら、そういう医療行為をせざるを得ない状況に多くの医師が苦しんでいる現状を紹介されています。

 

 昔の老人は達観したところがあって、静かにお迎えが来るのを待つといった姿勢があって、それを周囲も理解していた部分があったと思うのですが、先日紹介した『ゼロコロナという病』でも指摘されていたように、ただただ「死」をタブー視して避けようとする死生観の「幼稚化」のせいで、無用に苦しまなければならないようになっているようです。

 

 また、メディアなどで「老い」をネガティブに捉える傾向が強くアンチエイジングみたいなものが礼賛されることがあって、それもある意味「死生観の幼稚化」の一面と言えるのかもしれませんが、「老い」を熟成みたいに捉えて、その人生の最終期を静かに、かつ豊かに過ごすように、徐々に受け入れていくことがその後の充実につながるのではないの!?ということを、我々も早めに受け止められるようになりたいモノです…