人はどう死ぬのか/久坂部羊

 

 

 元医師の小説家が語る"死生観”に関する著書です。

 

 そういう死生観に関する本というのは、どちらかというと観念的なモノに寄った内容になりがちなのですが、この本は久坂部さんが医師として多くの患者を看取ったご経験と、その後外務省の医務官として諸外国において、日本とは異なる死生観に触れたご経験を踏まえた、実際的な内容となっています。

 

 養老先生の『死の壁』など死生観に関する本では、日本人が死を特別視し過ぎな傾向に触れられていますが、この本ではそのことによる弊害について触れられていて、可能な限り死を避けようとするスタンスがQoLを損なっている実例について触れられています。

 

 患者もしくは患者の家族のそういうスタンスが、医療関係者の過剰医療に陥りがちな状況を作っているということで、患者本人からすれば静かに死なせてくれた方がラクなのに、アリバイ的な治療をしてしまうということが頻発しているようです。

 

 そうならずに、自分が望むような死を迎えるためにも、どういう死に方をしたいかということをしっかりと考えて、近親者に意図を浸透させておくことの重要性をクドいほど強調されており、死を忌避せずにある程度の年齢になれば、どう死にたいかということをイメージしておくことが、終わり良ければ総て良しというように、シアワセな最期を迎える上での最重要事項と言えるようです。