寿命が尽きる2年前/久坂部羊

 

 

 以前『人はどう死ぬのか』を紹介した久坂部羊さんの近刊で、こちらも死生観について語られているのですが、『人はどう死ぬのか』が多少抽象的な色合いが強かったのに対し、この本は如何に「死」に臨むか、という具体的な「あり方」みたいなものを語られた内容になっています。

 

 著者の久坂部さんは小説家であるとともに医師でもありながら、高齢の人が病院にかかることについてかなり否定的で、最近よく紹介している和田秀樹さんの『80歳の壁』なんかでも、ある程度否定的な意見でしたが、久坂部さんはもうちょっと過激なスタンスで、それなりの歳になって治らない病気に罹ったら、医療にかかることは有害だとまでおっしゃいます。

 

 というのも、「治る」病気であれば治療を受けるのはいいのですが、「死に対して医療は無力」だとおっしゃっていて、医師の方は治らないと思っていても罹ってきた人には治療を施さざるを得ず、実はそのことが患者本人や世話をする周囲の人に多大なる苦難をふりかからせるリスクがあるということです。

 

 60歳くらいまでならともかく、70歳以上になって「まだまだ生きたい」と思って医者にかかるのは有害なので、一定の年齢になるまでに「生き切った」と思えるくらいに「生」を充実させることが上手に「死」を迎えるために重要だということで、なかなか難易度は高いとは思うのですが、そういうことを意識しておくことで「生」に対する執着を低減させることはできるはずで、ムダに長生きしてQoLを低下させるよりも、機嫌よく「生」を満喫する方がいいんじゃないか、ということにはワタクシも大賛成です。