アフター・アベノミクス/軽部謙介

 

 

 安倍元首相が主導したアベノミクスの動静を追ったシリーズ『官僚たちのアベノミクス』『ドキュメント強権の経済政策』に続く3作目ですが、首相退任後も隠然たる影響力を持ち、アベノミクス自体も脈々と生き続けていく様相を呈していたのが、安倍氏の銃撃による死去という強制終了に至るまでの動きを紹介しています。

 

 今回はどちらかというと、政治家と日銀、財務省三者の綱引きみたいなモノを中心にアベノミクスの総括の様相を呈している感じですが、当初「黒田バズーカ」などと言ってハデにブチ上げておきながら、箸にも棒にもかからない空砲に終わり、次第に財政政策への傾倒を志向するモノの、プライマリーバランスの実現を悲願とする財務省に阻まれつつも、「安倍一強」の圧力で次第ににじり寄っていく経過を追われます。

 

 ただ、先日紹介した加谷珪一さんの『縮小ニッポンの再興戦略』で触れられていたように、金融政策であれ、財政政策であれ、この数十年の日本経済においては、その有効性は見いだせなくなっており、結局は三社が自己保全のために如何に自分の利益を保つかということに終始した結果、政治家の票稼ぎに後の世代への借金を増やしただけ、みたいな悲しい結果になり、日本経済の停滞がその分長引いただけということになってしまったということもあり、この本の最後にも書かれていますが、しっかりとアベノミクスの総括をした上で、今後の経済運営を考えていってもらいたいものですが、財務省に甘い宏池会の岸田氏が首相なのが困ったところです…