世界で最初に飢えるのは日本/鈴木宣弘

 

 

 農水省の官僚から農業政策に関する研究者に転身された方が「食糧安全保障」の迫りくる危機について警鐘を鳴らされた本です。

 

 ロシアによるウクライナ侵攻以降、世界有数の小麦産出国であるウクライナからの小麦輸出が停止してしまい、世界の少なからぬ国の間で小麦の取り合いの様相を呈しており、一部の国では食糧危機となっているということです。

 

 そんな中で日本では、食糧自給率が低い状況が続いていたワケですが、このような世界的な食糧危機の中でも、経産省財務省が牛耳る官界や、その影響力が大きい政界では「経済安全保障」が取りざたされてはいるものの、その中に食糧の確保は含まれておらず、日本での食糧危機への危機感は低いままです。

 

 日本の食糧自給率が低い状況というのは、アメリカの占領政策の一環としてのアメリカ経由での食糧供給による支配が継続したが故だとされていますが、実際に今回のような世界的な食糧危機が深刻化した場合に、自国民より優先して日本に食糧の供給をしてくれるワケもなく、今回を教訓に「食糧安全保障」の施策を充実させることが喫緊の課題だと警鐘を鳴らされています。

 

 もう手の施しようもないほど手遅れになって、ようやく人口減少対策に手を付けようとしている自民党政権ですが、やはり国家存亡の危機ともいえる「食糧安全保障」にも、国民が飢えようとする事態になるまで、知らんぷりを決め込むのでしょうか…