人を救えない国/金子勝

 

 

 時折テレビのコメンテータとしてもお見掛けする経済学者の金子先生が”アベノミクス”を糾弾します。

 

 モリカケ桜を始めとする安倍政権の所業が並べられていて、改めて第二次安倍政権が憲政史上最悪の政権だったとの認識を新たにしていますが、金子先生も怒りのあまり紙幅の半分弱を費やして安倍政権の所業を糾弾していますが、この本の主題はそこではなく、後を継いだ菅首相をはじめとして少なからぬ自民党の有力者たちが成功したかのように虚言を弄する”アベノミクス”が、実は半ば粉飾ともとれる株価操作などの小細工で、最低限の指標の見栄えを整えただけで、むしろ日本経済全体を危機的な方向に導いてしまったと指摘されています。

 

 その結果、日銀が国債などを買い支えるために日本の財政状況は過去最悪の状況となっていますし、金利政策の不備で日本の産業構造は壊滅的な状況となっていて、かつて世界の最先端に君臨していた日本の製造業は、アメリカや中国にはるか遠くに置いて行かれただけではなく、台湾や韓国の後塵を拝する体たらくとなってしまったというワケです。

 

 そればかりか医療や教育といった分野への支出を大幅削減したことが、コロナ禍の惨禍を拡大してしまった側面があることと、日本人の人材としての価値をOECD最低レベルにまで低下させてしまっています。

 

 新政権がそういう惨禍から如何に立ち直るかということが課題となり、この本もその処方箋を提供することがテーマとなるはずなのですが、なかなか有効な施策を見出すのは難しいようで、教育投資の拡充やエネルギー政策の転換といった、かなり長期的な施策の定時にとどまっており、今後かなり長期に渡り、安倍政権を選んでしまったツケを払っていかなければならないようで、今後はああいう無教養な政治家を選ばないように、せめて我々もそこを教訓としてキモに銘じておかなければならないようです。