ざっくりわかる8コマ地政学/一色清、よしたに

 

 

 以前、ある学問のジャンルのエッセンスを8コマのマンガを交えて紹介する『ざっくりわかる8コマ哲学』『ざっくりわかる8コマ人類史』を紹介しましたが、そのシリーズの続巻で地政学版を見かけたので手に取ってみました。

 

 それにしても、哲学はともかくとして、人類史、地政学とチョイスがシブ過ぎ…

 

 ロシアによるウクライナ侵攻にしても、報道の中でかなり多くの専門家が地政学的な観点からのコメントを寄せるなど、昨今地政学への関心が高まっているようですが、そもそも「地政学(Geopolitics)」というコトバ自体が19世紀末~20世紀初頭に認識されるようになったモノで、メディアなどに取り上げられるようになったのも21世紀に入ってからのようで、アメリカのイラク侵攻以降だということです。

 

 元々地政学自体が、軍事的な戦略策定の要請から生まれてきたという要素もあるだけに、かなり個別具体的な色彩が強く、ごくごく原則的なところを除けば、割と全体像が見えにくいところがあるので、どうやって「ざっくりわかる」ようなモノになるんだろう!?という興味があったのですが、マンガを取り入れた特性を活かして、なかなかのモノになっています。

 

 というのも、逆に日本列島周辺や、ロシアのウクライナ侵攻という個別具体的な案件について、ステークホルダーたる国家をマンガのキャラに見立てて、それぞれの利害を主張するといったカタチをとられていて、そういう利害の対立をクローズアップして、地政学の研究対象を提示するというカタチをとられています。

 

 やはり印象的なのは日本を取り巻く地政学的な重要性で、ユーラシア大陸の東渕に位置するということで、米ソ対立の冷戦期に資本主義陣営の砦のような役割を担わされることになったことで、ロシアや中国が航行しようとすると、日本列島がフタになるということが相当な重要性を持っていることを改めて認識させられます。

 

 さらには、アメリカが沖縄の米軍駐留にこだわることについて、米ソ対立の頃より、米中対立が顕著となっている現在の方が格段に重要性が増しているということで、そのあたりの民主党政権の空気の読まなさを思い起こさせます。

 

 ということで、マンガも交えているので軽く読めますが、地政学的な思考を垣間見るという意味で、かなり有用な本ですので、興味はあるけどとっつきにくいと思っている方は是非一読してみてください!