ロシアがウクライナ侵攻の暴挙に及んだ挙句、数日でカタをつけるはずがウクライナの思わぬ頑強な抵抗と、自国の拙攻で手詰まりになったが故に核兵器の使用までチラつかせてしまったことで、あの時ほどの切迫感はないかもしれないんだけど、おそらくキューバ危機以降最大の核兵器使用の危機にあるんだろうな!?というのが現在の核兵器を取り巻く状況だと言えそうです。
この本は、そのロシアのカウンターパートであるアメリカの核兵器の状況を紹介した本で、前半は核戦力の「三本柱」と言われる、大陸間弾道ミサイル(ICBM)・戦略爆撃機・原子力潜水艦を著者である渡辺さんが取材した様子を紹介しているのと、後半でオバマ政権・トランプ政権・バイデン政権における核戦略の変遷について紹介されています。
オバマ政権の末期に核兵器の削減が提唱されて、アタマの中がお花畑な日本人には大ウケしたのを覚えていますが、抑止力に依存している限りは相手の出方がすべてであり、削減を言い出したモノの、相手が減らさなければコッチも減らさない、ということなので、結局は掛け声倒れに終わってしまうことは、容易に想像できたとは思います。
トランプ政権を経て、オバマの核政策を受け継いだバイデン政権は、理念が希薄なだけにより理解しづらく、むしろ損得勘定で動くトランプ政権の方が、こと核戦略については、お互いに使うことは損得勘定で言うと絶対に損だということは共有できていることなので、新たな核抑止の構図を生み出せる土壌があったのではないかと、今更ながら感じさせます。
前半の核戦力の取材で、ここまで見せるのか!?と驚くほど、運用面を含め公開していて、一番ビックリなのが、原潜を一定程度公開していることで、秘中の秘たるモノであるはずのモノを公開するところに、結局ホンネレベルで「使う」モノだという認識がないからで、「公開」の抑止力の一端なんだろうな…と感じます。
とはいえ、プーチンや金正恩みたいなアッチ側の人が核のボタンを握ってしまうと、そうとばかりは言ってられない状況になっているのが、恐ろしいところです…