中国の大問題/丹羽宇一郎

 

中国の大問題 (PHP新書)

中国の大問題 (PHP新書)

 

 

 伊藤忠商事の社長で、2010年6月から2012年12月まで中国の特命全権大使を務めららた丹羽さんが、その後経験を踏まえて語られた日中関係のあり方についての本です。

 

 2014年からわずか7年で相当日中を取り巻く環境は変化していますが、丹羽さんが大使を務められていた期間中に尖閣国有化による軋轢があり、日中の関係が下降していくキッカケとも言える時期で、かなりの苦難があったようです。

 

 当時の中国にまつわる「大問題」を、人口、経済、少数民族日中関係等の分野ごとに語られるワケですが、この頃はまだ習近平国家主席に就任したばかりで、まだそれほど覇権国家への野心を露わにしていなくて、かつアメリカもオバマ政権のユルさの関係で、米国との関係も今から考えると”蜜月”とも言えた状態で、米中関係でそれほど大きな問題を抱えていなかったとはいうモノの、あれだけ広大で、多民族で、世界一の人口を抱えているということもあって、様々な問題を克服しながら徐々に国力を充実させていった過程を紹介されます。

 

 また、この時期はGDPでは日本を逆転したモノの、まだまだ一人当たりのGDPでは格差があり、人口ボーナス頼りの経済発展という側面が強く、まだまだ脆弱なところが見られたモノの、徐々に自信を強めつつあり、そういったことを背景に次第に日本に対しても強気の姿勢が増えてきている様子を指摘されています。

 

トランプという、ある意味究極のワイルドカードの出現という事情もあったのですが、アメリカとしても”出る杭”を看過できなくなり、オバマ政権時代は副大統領として中国との蜜月演出の中心的な役割を果たしたバイデン大統領も、かなり中国に対して先鋭的な態度を隠さなくなって、さらに中国も南シナ海や台湾への野心を隠さなくなった今の状況を丹羽さんがどのように見られているのかについて興味を掻き立てられました。