強豪校の監督術/松井浩

 

 

 この本はコロナ禍前の2018年出版ですが、かつては有望な選手を全国からかき集めて、その選手たちをスパルタで鍛え上げて…というのが強豪校の通例だったと思うのですが、近年はコンプライアンス的にも、選手たちの器質的にも、なかなかそういうワケにはいかなくなっているようで、昨今の新たな強豪校の指導者像をあぶりだされています。

 

 青山学院大学の駅伝部を屈指の強豪に育て上げた原晋監督も、就任当初部員たちの生活習慣を整えることから強化に着手したように、この本で取り上げられる強豪校の監督たちの多くも、あいさつや道具の取り扱いなど競技力よりも人格形成を重視されている方が多いようですが、そういった人格形成をすっ飛ばして競技力の育成ばかりに注力してしまうと、イザという時にボロがでるというか、精神的な強さができてこないというところがあるようです。

 

 また、昔だと圧倒的に上から目線で、如何に監督の言うことを聞かせるかということに主眼が置かれがちだった指導が通例だったと思うのですが、選手の自主性を活かすことに主眼を置く監督さんが多いようで、そういう自主性を活かすところから起きる内発的なモチベーションの方が、余程強力だということを昨今の強豪校の監督さんたちがよく理解していて、実践されていることがうかがえます。

 

 特にそういう指導の最右翼だと知られる西谷監督が、大阪桐蔭を近年では屈指の強豪校に育て上げていることが象徴的だといえるかもしれません。

 

 未だに塁上でのパフォーマンスをたしなめるなど、アタマにカビの生えた高野連が跋扈する高校球界ではありますが、こういう風にリベラルな風が主流になっていくことで、子ども達がやってみようという気になればいいな、と思います。