前進力/加藤三彦

 

 

 かつて高校バスケットボール界において、圧倒的な最強王者として君臨し、バスケマンガ伝説の名作『SLUM DUNK』においてラスボス的な位置づけである山王工業のモデルとしても知られる能代工業高校の全盛期に監督をされていた方の自己啓発書な著書です。

 

 加藤さんの監督時代、日本人として初のNBAプレーヤーとなった田臥勇太を擁して3年連続主要大会3冠という偉業を成し遂げられたのですが、その指導のエッセンスについてはスポーツのみならず、ビジネスを始めとして人生のあらゆる側面に役立つところがあるのではないかということで筆を取られたということです。

 

 監督在任時も、あれだけの選手が集まってくれば結果は出るよね!?みたいな見方をされることも少なからずあったようですが、それでも勝ち続けるということはカンタンではなかったようで、それなりの蹉跌もあったようで、それでも輝かしい結果を残してきた秘訣を語られています。

 

 能代工業の3年連続3冠を成し遂げた1996~98年は、スポーツの強豪校と言えばいわゆるスポ根的なスパルタ指導が大勢を占めていた頃ですが、加藤さんは選手の自主性を重視する指導をされていたということで、バスケのスキルもさることながら、一人の人間としての資質の充実を心掛けられていたということです。

 

 傍目には順調に見えた当時の能代工業であっても、その過程においては難しい局面が少なからずあったということを告白されていますが、それを乗り越えて輝かしい成果を残せたのは、困難な状況の中で指導者に頼らず選手たちが自律的に解決する姿勢を貫いたが故だとおっしゃっておられますし、今や日本バスケ界のレジェンドとも言える田臥選手のその後のキャリアを見ても、加藤さんの教育が息づいているんだろうなぁ、と思わされます。