箱根駅伝ノート/酒井政人

 

箱根駅伝ノート

箱根駅伝ノート

  • 作者:酒井政人
  • 発売日: 2017/12/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 ご自身も箱根を目指したランナーだった”駅伝ライター”の方が2017年の大学駅伝のシーズンを紹介された本です。

 

 ”箱根駅伝”と銘打ちながら、この本では箱根駅伝まではカバーされていないのですが、大学の”駅伝部隊”がどのようにシーズンを過ごしているのかがよくわかります。

 

 多くの人は大学の陸上と言うと興味があったとしても箱根どまりでしょうし、多少興味の強い人でも三大駅伝をフォローしている程度だと思われます。(ワタクシもそのクチです…)

 

 特に2017年はユニバーシアードが開催されたこともあり、よりスケジュールが詰まっているのですが、3月の学生ハーフ、4月のトラックシーズン開幕から、6月の全日本駅伝予選・日本選手権、10月の出雲、箱根予選会、11月の全日本と、実は息をつく暇もなくレースが詰め込まれていて、それぞれの月に1つずつ有力校の取組を紹介された形式で構成されています。

 

 特にトップクラスの大学に取って、6月の全日本駅伝予選・日本選手権の双方に選手を出さないといけない状況だと、その割り振りにアタマを悩ませることが多く、2017年の東海大は全日本を予選から戦わなければならなかった上に、黄金世代と言われる2年生が全日本選手権のトラック競技に出場することもあって、やりくりは大変だったようですが、両角監督の世界を見据えた育成の考え方と、選手層が厚かったこともあり、全日本の予選通過と、舘澤選手の1500mでの日本選手権制覇という輝かしい成果に繋がったということのようです。

 

 もう一つ印象的だったのが、前年度に87回の連続出場が途絶えた中央大学で、1年生で主将に任命された舟津選手が、就任当初は上級生の反発がありながらも、次第にチームをまとめ、この年の予選会で見事箱根への復帰を果たした道のりを読んでいると、もらい泣きしそうになります。

 

 ということで、箱根駅伝駅伝それ自体は全くカバーされていないにも関わらず、多くの大学は常に箱根が念頭にあり、箱根で自分たちなりの結果を出すためにシーズンを過ごしているんだということが分かります。

 

 今年は既に出雲の中止が決まってしまいましたが、何とか全日本と箱根は開催できるようになって欲しい所です。