KANO 1931海の向こうの甲子園/ウェイ・ダーション、チャン・チャンウェイ

 

 

 2014年に映画化された、1931年に台湾代表として、現在の高校野球の前身である甲子園の全国中等学校優勝野球大会に出場し、初出場ながら決勝まで躍進し準優勝を遂げた嘉義農林学校野球部の軌跡を描いたモノです。

 

 当初は試合で1点も取れないほどの弱小野球部だった嘉農こと嘉義農林学校野球部ですが、強豪松山商業を率いて甲子園で躍進した近藤監督の監督就任を契機にスパルタ的な練習でみるみる強化されていって、1928年の近藤監督就任からわずか3年で甲子園出場を勝ち取ったということです。

 

 当時嘉農では、日本民族漢民族高砂族の三民族が在籍したようで、そういう境遇にあるところの多くでは、日本人が日本民族にエコひいきをして他民族の反発を受けるといった軋轢があるのが通例だったようですが、近藤監督は選手たちにキビシい練習を強いるモノの、すべての選手を実力に基づいて公平に扱い、守備に長けた日本人、打撃に長けた漢人、韋駄天の如く足の速い高砂族の選手たちの特徴を活かしたバランスの良いチームを作り上げ、選手からも大いに信頼されたことでチームの一体感を生んだことが躍進の大きな要因だったようです。

 

 甲子園ではエースの呉明捷の快投もあり決勝まで躍進し、決勝では呉選手のケガもあり強豪中京商に敗れ準優勝に終わったのですが、他民族チームの躍進に嘉農は甲子園で大きな支持を集めたようです。

 

 割と日本人って内向きなことが多く、あまりこういうリベラルなモノの見方ができる人は多くないとは思うのですが、時折、2019年W杯におけるラグビー日本代表の躍進の要因とされた「One Team」に見られるようなこともあり、多様なルーツを持つ人とフラットに交流できるような機会を増やし、リベラルな思考を普及させていきたいところですね。