甲子園と言う病/氏原英明

 

甲子園という病 (新潮新書)

甲子園という病 (新潮新書)

 

 

 2019年の高校野球岩手県大会決勝で高校ナンバーワンと言われた佐々木投手を、ヒジに違和感があるということで登板を回避させて敗れた大船渡高校の国保監督の采配が物議を醸しましたが、エースピッチャーの酷使や手段を選ばない戦い方など、高校野球における歪んだ勝利至上主義がもたらす弊害を取り上げれらています。

 この本の中ではまずピッチャーの酷使について触れられていて、故障しながらムリな登板を重ねて限界を超えてしまった投手や、早実で全国優勝し、その後日本ハムに入団した斎藤投手や、済美高校から楽天に入団した安楽投手など、高校時代に見せた才能に見合った活躍をプロで見せられていない状況を見て、登板過多がもたらす弊害を指摘されます。

 甲子園のために厳しい練習に耐えてきた選手からすると、多少の故障があってもムリして試合に出たいと思うのが自然でしょうし、本来であれば冷静に状態を見極めてムリをさせないようにするのがオトナの役割であるはずなのに、そのオトナたちが目の前の勝利に目がくらみ、結果として選手を壊してしまう例が枚挙に暇がないようです。

 最近でこそ複数人の投手を育成する強豪校も増えては来ていますが、それだと有力選手の入学が見込めない公立高校が不利だとかという議論もあって一筋縄ではいかなさそうです。

 結局日程に十分な余裕を持たせることが最良の解決となるんでしょうけど、利権で雁字搦めの高校野球では、誰も本気になって手を付けようとしなさそうですし、これから先も選手の犠牲の下に続いていくのでしょうか…