未来力/三木谷浩史

 

 

 楽天の創業者である三木谷さんが『週刊文春』に連載されていた『未来』をまとめた本です。

 

 先日紹介した『突き抜けろ』が、三木谷さん周辺の人々が語る三木谷像だったのに対して、この本は三木谷さんが経営などを中心として自らのお考えを語られた本で、主に「ビジョン」について繰り返し語られています。

 

 その中には、ともにカラオケに行く仲だというイーロン・マスク氏など名だたる起業家が登場しますが、こういった近年の起業家に共通するのが、インターネットなど、起業された時にはまだまだ一般的な利用に耐えるモノではなかったICTの進化を信じて、そこにビジネス展開の可能性を見出したからだということを繰り返し強調されています。

 

 日本が『失われたx0年』を経て、一人当たりGDPOECD諸国で底辺を這うようになってしまったのは、政治のリーダーやトップ官僚、大企業の経営層が、欧米の起業家たちとは異なり、将来へのビジョンを失ってしまったことに起因するとおっしゃいます。

 

 高度経済成長からバブル期に至るまで、既得権益層の特権を守るため規制でがんじがらめにしてしまって、カタチばかりの規制緩和では海外からのビジネスを呼び込むこともおぼつかなくなり、実は日本企業が起こせたはずのイノベーションも芽のうちに摘み取られることになってしまったとおっしゃいます。

 

 そんな中で三木谷さんは薬品のネット販売などで知られるように、安倍氏、菅氏といった元首相を含む知己のある政治家に規制緩和を求め続けているということですが、できればそういった対処療法的な対応ではなく、政治家を始めとするリーダーが未来像を以って任務にあたることが重要なようですが、日本のリーダー層というのは、近代以降では、幕末~明治維新期と敗戦後を除けばそういったビジョンをもった形跡がなく、結局それくらいの危機に陥るまでは、目が覚めることがないのでしょうか!?…今も十分、それくらいの危機にあるとは思うのですが…