アメリカとは何か/渡辺靖

 

 

 トランプ前大統領の登場以降、アメリカの分断が顕著になって、バイデン現大統領との大統領選をめぐる混迷でそれが決定的になったと言われますが、そういうアメリカの国内の分断や覇権の在り方など、アメリカの現況を捉えた本です。

 

 冒頭でアメリカは「実験国家」という側面があることについて語られていて、先進的な政治形態への試行錯誤の末、発展を遂げたという側面を指摘されていて、元々「自由」を標榜する中で喧々諤々の議論があったのは現在の多様な意見の存在とも興津すると思われるのですが、国難の際にはキュッとまとまるといったイメージを持っていて、そういう異なる見解を超えたまとまりというのがアメリカの強さを象徴していたようにも思えます。

 

 ただ、トランプ氏以前から、そういうまとまりのなさというのは徐々に表れてきていたようで、トランプ氏の登場はそれをあらわにしたに過ぎないようです。

 

 また国外的な側面では、オバマ大統領の政権時に「世界の警察官」たる立場を放棄するような発言があり、トランプ氏もアメリカ第一主義を標榜して、自国の利益に反することからは手を引くような外交政策を展開しましたが、必ずしもそのことが内政の充実などということにつながっていないようで、意見の多様化が顕著になった結果、政府の信用度がどの層からも低下しているような結果になっているようです。

 

 かなり観念的な捉え方が多く、なかなか捉えどころがなくて難解だったのですが、そういう混沌としたところが現在のアメリカなのかな、とも思えて、中国の興隆の中、一抹の不安を覚える内容のモノでした。