北朝鮮がアメリカと戦争する日/香田洋二

 

 

 時折ニュースでも戦闘が起こった際に専門家としてコメントを寄せられているのをお見掛けする元海上自衛隊で司令官まで務められた香田さんが語られる、トランプ政権時のアメリカの北朝鮮への攻撃の可能性について語られた本です。

 

 この本は2017年出版で、執筆時にはトランプ政権が発足して1年も経っていなかった時期のようですが、かなり切迫したアメリカの北朝鮮攻撃の可能性を指摘されていて驚きます。

 

 そもそもクリントン政権以降、断続的にアメリカでは北朝鮮への攻撃の可能性をかなり真剣に検討していたようで、というのも北朝鮮のミサイル開発がアメリカの想定以上に進化し、ICBM級とも言えるレベルにまで達しているようで、最早アメリカ本土をも射程に捉えられる状況になり、ミサイル実験を放置すべきではないという意見は一定の割合を占めているようで、最も効果的なタイミングを狙い続けていると香田さんは指摘されています。

 

 その中で2009~2017年のオバマ政権の外交的な無策が中国の増長、北朝鮮の核開発の進展を促したという側面が強く、一般的な日本国民からは広島への訪問やノーベル平和賞の受賞などもあって割と評判がいいオバマ氏をハゲシく糾弾されています。

 

 後を受け継いだトランプ政権は外交的なプロトコルを斟酌しないところから、今度こそ北朝鮮にお灸をすえると思われていたようですが、結局金正恩に篭絡されて攻撃はうやむやになってしまった挙句、バイデン氏に敗れて2期目はならず、そのうちにロシアのウクライナ侵攻が起こって状況は激変してしまい、北朝鮮はここぞとばかりにロケット発射実験を繰り返していますが、ウクライナ侵攻が収束した辺りが北朝鮮にとっての新たな正念場になるのかも知れません。

 

 ということで、岸田政権の軍事費調達のための増税というのは、やり方の拙劣さは目を覆うばかりですが、一定の意義があるモノとは思われ、アメリカの北朝鮮侵攻というのは一定のリアリティを以って捉えておくべきことだというのが、この本を読むと切実感を以って理解できるような気がします。