日本と中国、もし戦わば/樋口譲次

 

 

 陸上自衛隊で幹部候補の教育も手掛けられていた方が、中国の日本侵攻の可能性とそのシミュレーションについて紹介された本です。

 

 この本は2017年の出版ということで、トランプ政権誕生間もない頃でマティス国防長官を始めとしてズラリと軍出身者を政権の中枢に配置した、かなり好戦的に見える布陣で、中国を増長させてしまったオバマ政権における”失敗”を踏まえて、かなり中国に対して強硬な態度で対峙しており、米中衝突が現実的な可能性として取りざたされ始めていた時期だということもあり、かなり具体的に衝突のシナリオも紹介されています。

 

 そんな中で尖閣諸島へのちょっかいも激化していたワケですが、この本の中でアメリカの外交専門誌『Foreign Policy』誌に掲載された中国による尖閣諸島占領のシミュレーションが紹介されていて、わずか5日で占領を完了させるという驚愕の内容を提示されています。

 

 尖閣諸島なんてちっぽけな無人島にそこまで執着するのか!?というギモンを抱く向きも少なくないとは思いますが、中国というのは国力の状況に応じて国土の拡大縮小を繰り返してきており、習近平の下、国力の充実した昨今、国土の拡大欲求が膨らんでおり、しかもアメリカとの対抗上、是非とも手にしたい台湾・沖縄占領の上で、かなり重要なオペレーションとなるようです。

 

 沖縄占領なんて、多くの日本人は絵空事だと思うかもしれませんが、サラミスライス戦略により、なし崩し的に南シナ海の広大な領域を占拠した実績を思うと、現在の尖閣諸島におけるオペレーションをもっと大きな意図の一環だと考えた方がよさそうです。

 

 しかも、ロシアのウクライナ侵攻を中国がどうとらえるかによっては、台湾~沖縄侵攻を現実的なシナリオとすることも考えられ、そういう危機感をアタマに置いた上での国家運営を考えていく必要がありそうです。