「反日」中国の真実/加藤隆則

 

 

 読売新聞の中国総局長を務められた方が語る中国の「反日」の内幕をまとめた本です。

 

 この本が出版されたのが2013年で、習近平が総書記に就任したばかりの頃だということもあり、随分と中国と日本を取り巻く状況は変化してしまっていて、モノによってはかなり隔世の感のあるトピックもありますが、中国における日本の重要性が著しく低下しているという状況はあるモノの、基本的に中国共産党の「反日」のスタンスは変わりないので、そういう底流に流れる考え方を理解しておくのは意義があることだと思われます。

 

 元々中国人というのは、漢民族を中心としているものの、多民族国家であることもあって国家への帰属意識が低いとされていて、中国共産党としては国力の向上を図る上で国家の一体感の醸成を図る上で、国民の国家への帰属意識を向上していくことが重要だと考えたようで、その一環として「反日」が利用されたということのようです。

 

 元々、中国にとっては朝貢を受けていた日本に蹂躙された経験というのは、飼い犬に手を嚙まれた的な側面もあり、中国にとっては著しく国家としての誇りを傷つけられることであり、そういう日本への反発を醸成することは国家としての誇りを取り戻すという意味で国民の一体感を醸成する重要な手段と言えるようです。

 

 特にこの本が出版される直前に日本による尖閣諸島の国有化に反発する官製デモがあったワケですが、官製ではあったものの結果として、日本への反発という空気を醸成するのにかなり有効だったようです。

 

 面従腹背お家芸の中国人としては共産党反日プロパガンダに同調したように見せながら、せっせと来日して爆買いをしていた過去もコロナ禍によって途絶えてしまい、最早中国人にとって日本はどうでもいい国になってしまうカタチでコトが収まっている状況がいいのか悪いのかわかりませんが、今度は風下に立った日本人の「反中」ということになるのでしょうか…