60代からの幸福をつかむ極意/齋藤孝

 

 

 齋藤孝さんが「20世紀最高の知性」と言われる英国の哲学者ラッセルの著書『幸福論』から60歳代以降のシアワセにつながるような考え方を紹介された本です。

 

 かねてから日本では幸福を感じている人が少ないと言われ続けていて、国連が毎年発表している「世界幸福度ランキング」において、大体の国では経済的な繁栄度と幸福度の高さというのが、多くの場合ある程度の相関関係があると言われている中で、最近は凋落が激しいとは言うモノの、GDPの規模は一応上から数えた方が早い日本がOECD諸国の中でも底辺と言えるランキングにあることはちょっと異様に受け取られるところがあると思えます。

 

 じゃあ、なぜそこまで日本人が「不幸」なのか、どうすれば「幸福」になれるのかをラッセルの『幸福論』から見出すというのが、この本のメインテーマなワケですが、そのことについて、ちょっとした「あきらめ」がそのヒントだと指摘されているところが興味深いところです。

 

 おカネだけでなく、世間的にも認められて、周囲にいい顔をしてなどなど、日本人は「世間」への配慮など、求めるものが多すぎて、却って幸福感を得にくくなっているということで、一定、そういう虚栄心みたいなモノを度外視して、個人的な愉しみにフォーカスすることで、かなりシアワセになれるんじゃないかということは、多くのリタイア本でも指摘されるところです。

 

 現役世代では、ある程度「世間」とのつながりを持たざるを得ないところはあると思いますが、リタイアしてしまえば気に入らない相手とは接触しなくても生きていけるという選択の幅が広がるワケで、そういうところを断ち切って、映画だったり読書だったりという桃源郷に耽溺することも可能なワケで、特にそれほど人とのつながりを求めない人だと、さらにその可能性が高まるところがあるようで、そのケの強いワタクシなんかは、それでもいいか!とついつい思ってしまいます。

 

 ということで、思い切って自分のテリトリーを限定することが思わぬシアワセにつながるんじゃないか!?というのは、個人的にはかなりツボな指摘でした。