鴻上尚史のほがらか人生相談

 

 

 劇作家の鴻上尚史さんが雑誌『AERA』のWebサイト『AERA.dot』に掲載されている『ほがらか人生相談』という悩み相談的な連載をまとめた本です。

 

 冒頭で「ほがらか人生相談」と銘打ちながら、ヘビーな内容の相談も多いことに言及されていますが、それこそ死んでしまいたいくらいの悩みも含まれていて答えられる鴻上さんもなかなかプレッシャーがキツいんじゃないかと思いますが、若いころから主宰する劇団員の悩みを聞いてこられたご経験が活きているんだそうです。

 

 これまでこのブログでも鴻上さんの著書を再三取り上げていて、特にタイトルもズバリの『同調圧力』日本における同調圧力についての著書に深い感銘を受けたのですが、この人生相談を引き受けられたのも、鴻上さん自身が「日本人の宿痾」とされている「同調圧力の強さと自尊意識の低さ」を少しでも払拭したいという意図もあったようです。

 

 ということで、いくつか「同調圧力」に絡む質問もあるのですが、その中で多くの相談において、周囲の目を気にしすぎて、自分がホントにどうしたいのか見失ってしまっていることが多くみられ、ちゃんとそういうところを自分や自分の周囲の利害関係者とホンネのところを突き詰めてないことが多いんじゃないか、ということをおっしゃられているところが多くみられます。

 

 結局自分がホントにそうしたいのか、ということを自分に問い直さないと、「同調圧力」に流されることになりがちで、そうなると多くの場合、後々激しい後悔の念に苛まれるということで、自分の欲望を確かめたら、できる限りそこに忠実に行動するように勧められることが多くなっています。

 

 そういう自分の欲望を確認するということが自尊意識を取り戻すことにもなるでしょうし、はるかに自分の人生を生きているという実感を持てるような気がするということで、相談者がどこまで鴻上さんのアドバイスを実行するのかは定かではありませんが、有意義な人生相談なのではないかと思えます。