中国パンダ外交史/家永真幸

 

 

 中国がどのようにパンダを外交に活用してきたかを紹介した本です。

 

 上野動物園でパンダが生まれると国を挙げての祝福ムードとなるように、日本人の多くはパンダが大好きですが、実はそれは日本人に限ったワケではないようで、中国は世界中で大人気のパンダをしたたかに外交に活用してきたようです。

 

 パンダが認識されるようになったのは意外と最近で、1929年にアメリカ人が狩猟で”発見”したのが発端だということですが、次第にその可愛らしさが注目されるようになり、アメリカやイギリスがパンダを観賞用に連れて帰るようになったということです。

 

 当初はそれほど興味を示さなかった中国政府ですが、西欧諸国における人気と、密漁などにより激減したこともあって、政府の管理下に置くようになり、許可のない国外への持ち出しを禁止したということです。

 

 最初にパンダを外交の手段として用いたのは、日中戦争が泥沼化する中で、西欧諸国に対して、平和的な姿勢をアピールする意味もあってパンダを提供したのが始まりだということです。

 

 その後も、パンダを小出しに提供することで自国の主張を通すという巧みな外交を進めていく様子を紹介されており、動物すら戦略的に活用する中国の外交の手腕には、どこかの国の無策な外交を思うと、驚くばかりです。

 

 日本には1972年の日中国交正常化を受けて、つがいのパンダが贈られたのですが、まだ幼いながらもその頃の日本中の興奮ぶりはなんとなくうっすらと記憶に残っています。

 

 そういう経緯もあって、パンダは日本では平和の象徴、日中友好の象徴としてポジティブに受け入れられていますが、しっかりと中国のワナにハマってしまっているということなのかもしれません…(笑)