英語学習は早いほど良いのか/バトラー後藤裕子

 

 

 英語の早期学習というのは永遠のテーマで、ジリジリと小学校の英語学習開始の学年が早くなって来ていますが、ホントに効果あるの!?ということについて、紹介された本です。

 

 著者のバトラー後藤さんは教育心理学の研究者で子どもの第二言語・外国語習得の研究を専門にされている方で、この本では英語学習のメソッドではなく、本来人間が備えている言語習得のメカニズムからみた第二言語・外国語習得の傾向について紹介されています。

 

 ワタクシ自身も経験があって、ムスメたちに英語のビデオを見せたら、やたらキレイな発音で再現するので、やっぱり英語は早くから学ばせた方がいいんだ!?とおもったのですが、それが英語会話のスキルとして定着するかというとそういうワケではなさそうです。

 

 そもそもの言語習得というのは一定の年齢のうちに始めないと習得できなくなるということは確かなようで、昔オオカミに育てられた少年というのが話題になったと思うのですが、そういった幼少期に言語を学べなかったというじれがいくつかあったようで、その子たちは結局満足に言語を話せるようにならなかったということで、一定のコンセンサスができているようです。

 

 ただ、第二言語・外国語習得は必ずしもそうではないようで、移民を対象として第二言語・外国語習得の早さについて研究した事例があるようで、やはり年少者の方が習得が早い傾向があったということなんだそうですが、これは必ずしも年少者だから早いというワケではなく、母国語と第二言語・外国語に一定のトレードオフの関係があるということで、どちらの言語を多く使うかということが習得のスピードに影響を及ぼすようで、すでに母国語のベースが確定していて、そちらによりがちな年長者は第二言語・外国語を使う頻度が下がってしまうことが、習得を遅らせているという側面があるからのようです。

 

 未だ仮説ではあるものの、この本では、一定の年齢を過ぎてもそれなりの質と量の学習を積めば第二言語・外国語の習得は可能であり、留学もしくは海外赴任前に缶詰の語学研修を受ければある程度話せるようになる現象を見れば、その説の正当性は理解できる気がします。

 

 ということで、早期学習が第二言語・外国語習得の切り札というワケではなく、その説を信じて、早期学習を子どもに押し付けた結果、母国語の習得がおろそかになってしまうようなことがあっては元も子もないことであり、こういう研究結果を踏まえて冷静な対応が求められるところです。