学びとは何か/今井むつみ

 

 

 先日、認知科学の知見を元にした英語の学習法を紹介した『英語独習法』を紹介しましたが、こちらの本はもっと根源的な「学び」のメカニズムを認知科学の観点から解き解した本です。

 

 元々人間は、母国語を誰に体系的に教えられることなく習得するように、自ら自然に「学ぶ」習性があるワケですが、そういうことが外国語や数学には当てはまらないのはなぜなのかという問いかけをキッカケに「学び」や「熟達」のメカニズムを紹介されています。

 

 「学ぶ」ということと類似している事項に「記憶」がありますが、認知科学のメカニズムから言うと、「記憶」自体はただ単に脳に納めているというだけで、それを活かす意図はないということで、「学び」にするためにはそれを何らかのカタチで役に立つ「知識」に変換しなくてはならないということです。

 

 「知識」に変換する過程で「スキーマ」という変換のシステムを経るワケですが、その中には「記憶」がその後自分の「学び」に役に立つかどうかと言う取捨選択が行われるということで、よく英語の"R"と"L"の発音の違いを子どもは聴き分けたり話し分けたりできるのに、オトナができないのは、母国語を習得する過程でイラないものだというフィルタリングがされた結果なんだということです。

 

 でもそういう変換のシステムである「スキーマ」が意図しない変換をしてしまうこともあり、そういう誤変換をしないように、徐々にそのスキーマ自体のメンテナンスをして、”正しい”変換にたどり着くのが「学習」の過程なんだということです。

 

 ということで、「学び」のプロセスをスムーズに回すためには自発的な取組が必要なようですが、そういうアプローチを紹介してくれるともっとうれしんですけどね…(笑)