記者がひもとく「少年」事件史/川名壮志

 

 

 少年事件を手掛けられてきた毎日新聞の記者の方がたどる戦後の少年による殺人事件の歴史についての本です。

 

 というか、少年による殺人事件の報道の歴史と言ってもいいかもしれませんが、かなり少年が起こす殺人事件の質も変わってきたようです。

 

 またそんな中で実名報道から匿名報道への推移など少年による殺人事件の報道の在り方も変わってきているようで、戦後の殺伐とした中での興味本位的な報道から社会問題としての報道といった推移もあるようです。

 

 冒頭で紹介されているのが沢木耕太郎さんの出世作である『テロルの決算』で取り上げられた山口二矢被告が当時の社会党委員長である浅沼稲次郎を刺殺した事件を紹介されていますが、野党第一党の党首が刺殺されたという重大性からか被告が17歳であるにも関わらず躊躇なく実名報道されたことを取り上げられていますが、割と恣意的に実名報道をされていたようですが、次第に少年の更生の観点から匿名報道に向けた協定の整備が行われていったようです。

 

 年代的な少年による殺人事件の推移として、長らく政治的なモノや貧困に根差すものだったのが、1980年代以降家庭や教育の問題に根差すものが増えていったということなのですが、大きな転換点となったのが2000年の神戸連続児童殺傷事件、いわゆる「酒鬼薔薇」事件です。

 

 そのあたりを契機として、興味本位の猟奇的な殺人を少年が企てることが多くなり、「酒鬼薔薇」事件を契機として少年事件にも精神鑑定が取り入れることになり、「発達障害」などの精神的な問題に対する理解も進んだこともあって、そういった面での対応も進んでいったようです。

 

 ということで、少年事件というのは世相を色濃く反映する側面があるということもあり、昨今の荒んだ状況が、より深刻な犯罪を生むのではないかと恐ろしくなる次第です…