鴻上尚史の俳優入門

 

 

 鴻上尚史さんが演出家の立場から語られる俳優になる方法です。

 

 ワタクシ自身、あまりドラマや演劇に興味があるワケでもなく、増してや俳優になりたいなんて1ミリも思ったことは無いのですが、鴻上さんが語られるんだったら面白そうだなぁ、と思って手に取ってみました。

 

 この本は演劇コンクールの審査員をされた鴻上さんが帰途でコンクールに参加していた高校生にどうやったら俳優になれるかと尋ねられて、それに答えるというカタチで構成されています。

 

 実際に鴻上さんはそういう質問を受ける機会が多いようで、そういうご経験が下敷きになっているモノと思われます。

 

 イメージとして俳優というのはイケメンだったり美女だったりすることが必須条件だと思えてしまいますが、鴻上さんは必ずしも必須条件だとは思われていないということで、逆に欧米などでは、ハゲ、デブ、チビなどを含めて日常で見られるあらゆるタイプの俳優がいるということで、どうしても美男美女が多くなって選択の幅が狭まってしまうのは演出家の立場からすると、作ることのできる作品が薄っぺらなモノになってしまうという危惧を抱かれているようです。

 

 それよりももっと重要な俳優になるための必須条件というのが「自己プロデュース力」だということで、演出家や監督に、例え顔のタイプではなくても使ってみたいと思ってもらえるような個性を磨くことが重要で、そのためにはあらゆる経験をして、人間の厚みを積み上げていくことを勧められています。

 

 でも、そんな高い素養が求められる俳優でありながら、「失業が前提」というキビシイ競争環境に常にさらされ続ける覚悟が必要なようで、余程の熱意がないとやってられないというのが現実のようです。

 

 巻末に今や押しも押されぬ人気俳優である高橋一生さんとの対談が収録されているのですが、あれだけのポジションにいながら焼かれるような焦燥感を以って研鑽を積まれていることに驚くと共に、大変だなあ…と嘆息を覚えます。

 

 今後、ちょっとドラマを見る目が変わりそうな気がします…