孤独と不安のレッスン/鴻上尚史

 

 

 このブログでも五木寛之さんの『孤独のすすめ』や下重暁子の『極上の孤独』など「孤独」の効用を紹介した本を取り上げていますが、ワタクシ自身が老境に差し掛かるのが近いということもあって、割とリタイア以降の人をターゲットにしたモノが多いのですが、この本はおそらく学生くらいの年代をターゲットにしているのではないかと思われます。

 

 特に若い世代は「孤独」を避けたいモノだったり、恥ずかしいモノだと捉えることが多いようで、さして交わりたい人ではなくても「孤独」を避けたいがあまり、ムリにつき合っているということもあるようで、この本が出版された2006年はまだSNSがほとんどなかった頃で、今ほど交流が手軽ではなかった時期でもそうなんで、今なんてSNSで始終つながっていようとしているのかも知れません。

 

 そういう「孤独」を鴻上さんは「ニセモノの孤独」と呼んでいて、それに対して自己との対話を通して思索を深める「本当の孤独」を進められていて、思索を深めることによって、人間性を高める契機になると指摘されています。

 

 また「不安」についても、「振り回される」不安と「背中を押す」不安があって、ただただどうしよう、どうしようと思うのではなく、成長するための糧としての「不安」を抱くことの重要性を指摘されています。

 

 その他にも「他者」と「他人」という似て非なるモノを取り上げて、自分以外の人との交流における葛藤を取り上げておられるのですが、最近は少子化で一人っ子だと、あまりそういう葛藤を経験しないまま成長してしまうこともあるようで、いきなり幼稚園や学校で「他者」と遭遇してパニックになってしまうリスクもあり、社会に出るまでにそういう葛藤や「孤独と不安のレッスン」を経て、ある程度の耐性をつけておいて本がいいんじゃないか!?ということで、鴻上さんは教え子の学生に早いうちのひとり暮らしを勧められているということです。

 

 SNS全盛の時代で、最早そういうこと考えること自体少ないのかも知れませんが、こういう取組の重要性はより高まっているんじゃないかと思います。