孤独を生きる/齋藤孝

 

 

 齋藤センセイはこれまでも『50歳からの孤独入門』『孤独のチカラ』など「孤独」をテーマにした著書を出版されてきましたが、これまである程度ターゲットとなる年齢層を絞ったカタチのモノとなっていたのですが、この本はある程度、どの年齢層にも参考になる内容となっています。

 

 この数年はコロナ禍に伴う在宅で孤独を感じる人が急増しているでしょうし、かなりメンタル的にも問題を抱える人が出てきていることでしょう。

 

 ただ、そもそも現代日本においては、純粋に「孤独」となる状況というのはあまりなさそうで、それよりも各個人が「孤独」だと感じる「孤独感」が多くの人のメンタルを蝕むことになっていることが多いんじゃないか、という指摘をされています。

 

 かつて孤立していてそういうノウハウには長けていると自認されている齋藤センセイが「孤独感」を軽減するための様々な方策を紹介されていて、気休め的なモノもあるのですが、やはり根本的な対策としては、自己肯定感を高めることが重要だということで、割と日本人は自分にキビシい人が多いようには思えるところを、ちゃんと自分を評価してあげることを心掛けるべきなんだそうです。

 

 また、齋藤センセイおススメの「孤独感」払拭対策は、何と言っても読書だということで、ご自身は『福翁自伝』や『氷川清話』で福沢諭吉勝海舟を勝手に友として会話していたということで、そういうことで自分を高めるという要素もあるようです。

 

 さらには、私小説などを中心として文学の中には孤独が重要なテーマとなった著作が数限りなくあり、対処法を学べるという側面もあるようです。

 

 以前はそうでもなかったのかも知れませんが、昨今の日本人は極度に「孤独」を恐れているようにも思われ、結構それはそれで愉しみもあるんだよ、ということをこういう本を読んで再認識してもらいたい気もします。