視点をずらす思考術/森達也

 

 

 テレビのドキュメンタリー制作などを手掛けられ、ノンフィクション作家としても知られる方が語られる、ちょっとズレた視点から見ることの意義を語られた本です。

 

 ただ、この方冒頭でKYであることを自認されており、それが故にテレビのノンフィクション番組制作の企画において、ただ単純にご自身がオモシロいと思ったということで、低身長症の選手によるミゼットプロレスを取り上げようとしたところ、コンプライアンスがうるさい中で即座に却下されたということなのですが、そういう空気を読まなさがもたらす効用というテーマに合致しした、様々なメディアに寄稿された原稿を集めた本ということになっています。

 

 コロナ禍でも顕著な現象として現れたように、日本では相当同調圧力が強く、かつてKYというコトバが取り沙汰されたことでもわかるように、周囲との同調が強く求められる社会であるワケですが、冒頭で森さんはモンゴルの遊牧民が羊の群れに数匹のヤギを放ってその動きに羊が影響されて動くように仕向け、周囲の動きに従う傾向が強すぎる羊がそれが故に危機的な状況を招かないようにしているということを紹介されています。

 

 特に日本人は羊的な行動が顕著で、それが故に昭和の悲劇を招いたこともあり、どこかにヤギ的な働きをする人が常に必要とされるということを指摘されており、まあ、自己肯定的な要素も無きにしも非ずなのですが、最近の現象でいうと安倍政権時のマスメディアの翼賛的な姿勢を見ると、未だにああいう、戦時中のようなことがあり得るんだと思うと、異端児の存在というのは日本社会に取ってかなり重要なことだということを再認識させられるモノでした。