生贄探し/中野信子、ヤマザキマリ

 

 

 脳科学者の中野信子さんが『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんを迎えて、コロナ禍初期に顕著になった「自粛警察」などの「正義中毒」を生み出す心理的な現象について語られます。

 

 冒頭で中野さんが16~17世紀に顕著になった「魔女狩り」について語られていますが、その時の減少が日本における「自粛警察」によく似ているということで、自身が「正義」と思って大した原因も無く人を追い詰める状況を紹介されていますが、「自粛警察」では、他人がトクをしているとモヤっとするという心理現象と相まって、「自分や周りの他の人はガマンしているのにズルい!」という心理が生まれ、ヒステリックなまでの攻撃が行われたということのようです。

 

 特に日本では不当にトクをする人に対する風当たりが他の国に比べて高い傾向が強いらしく、更には同調圧力の異常な強さが、あたかもロックダウンをしているような息苦しい状況を自ら作り出したということのようです。

 

 それで諸外国に比べるとコロナ禍が”さざ波”で済んだという側面はあるモノの、そういう「出る杭を打つ」という風潮は、当然平時でも起こりうることでアリ、そんな国でイノベーションなんて起こりっこないよね!?というお二方のご指摘にグウの音も出ない思いをしながらも深くナットクしていしまいました。

 

 それにしても、この本ではヤマザキマリさんの博識が今まで読んだどの本よりも全開になっていて、後半では中野さんが完全に受け手に回ってしまう程の圧力で、若いうちから海外に出て様々な体験を積むことで、ひょっとしたらこれほど圧倒的な教養を身に付けることになるかも知れないと思うと、ウチの次女にも…と思いつつもヤマザキさんの壮絶な体験をさせる勇気はない父でした…