教育は何を評価してきたのか/本田由紀

 

 

 今を時めく社会学古市憲寿さんのゼミの指導教官だったことでも知られる社会学者の本田由紀さんが日本の教育について語られます。

 

 ご本人もあとがきで書かれているように、学術論文的な感じでかなり専門性も高いこともあって相当難解ですが、昨今の日本の停滞を教育が招いている側面を指摘されます。

 

 昨今では一人当たりGDPOECD諸国の中でも下から数えた方が早い状況が続いていますが、基本的な学力を図るPISAOECD諸国の中で未だトップレベルを維持していて、日本人の素養の高さがうまく活用できていない現状を表しています。

 

 そういう現状について、これまでの日本の教育が「垂直的序列化」と「水平的画一化」を志向しているモノとなっていることから、昨今の経済のグローバル化に伴う多様性の拡大に対応できるだけの人材のバラエティーに欠けていることが原因なんじゃないかと指摘されています。

 

 出口治明さんや堀江貴文さんが日本の教育に対して、企業で従順にうまくやっていける画一的な人材を作り出すためのモノになっていることを再三指摘されていますが、本田さんの示されている統計によると、最早そういう教育が、少なくとも経済の成長という意味では機能しなくなっていることは明らかであり、文科省も遅まきながら人材の多様化に向けた施策を講じてはいるものの、未だその成果が見いだせない状態です。

 

 よく佐藤優さんが、進路先がこういう人材を求めているということを明確にすれば、ある程度教育の改革に取って即効性があるとおっしゃっていますが、日本企業自体がそういう対応についてのグラウンド・デザインを失っているように見える昨今では、なかなか包括的な国家の成長戦略は見いだせないのかも知れません。