下流志向/内田樹

 

 

 『日本辺境論』などの著書で知られる思想家の内田樹さんが、2005年当時の若者についての「学習」や「労働」からの逃避について語られた講演をまとめた本です。

 

 2005年というとホリエモンこと堀江貴文さんがライブドアブイブイ言わしていた頃で、そういう現象が過度に、若年層の日々の行動に経済的な効率性を求めるような志向を取るといった影響を及ぼしていることを指摘されているのですが、例えば、ある教科のある単元を学んだからと言って、それがどれくらいの価値があるのか、ということをいちいち詮索して、そんなことのために自分の労力を費やすのはムダだと考えて、キチンと学習に取り組むことを拒否する学生がいたということです。

 

 さらには、自分の仕事に対する報酬が見合わないということで、働くこと自体を拒否してしまってニートとなってしまうという現象も当時顕著だったということで、そういう現象についても、過度に経済的な合理性を求める性向に起因する弊害だと指摘されています。

 

 まあ、多少言い過ぎなんじゃない!?と思えるフシもなくはないのですが、ただムカシと比べると、想定される成果に対して、ここまでだった労力をかけてもいいんじゃないかという打算的な部分が顕著になっているかもしれないとは感じるのですが、内田さんも指摘されていて、そこについては全面的に賛同するのですが、そういう若年層の経験値で感じられる「成果」って、それこそ限られたモノでしかなくて、付随的なメリットもあるでしょうし、経験値という意味で将来どのように効果をもたらすかという想像力もかけているでしょうし、若いうちからそんなに打算的になったら、却って人生をツマラナイものにしてしまいかねないんじゃない!?というのは、オジサンの発想なんでしょうかね…いずれにしても、ちょっと空恐ろしい思考に感じました…