空気を読む脳/中野信子

 

 

 精神科医の中野センセイが日本人に顕著な「空気を読む」ための脳のメカニズムを紐解いた本です。

 

 「空気を読む」というのは必ずしも自分が進んでそうしたいからというワケではないのですが、なんとなくそうしておいた方がいいという気がして、大勢に従うみたいな無難な選択をするということが多いんでしょうけど、そういう選択肢をするという脳の機能には一定の合理性があるということで、そこに左右しているのが「遺伝子」だということのようです。

 

 そういう風に日本社会において積み重なった行動様式が、遺伝子として脈々と後世の子孫たちに受け継がれているというのはなかなかの脅威ですが、そういう社会における合理性にまで寄与しているということもまたオドロキです。

 

 この本ではそういう「空気を読む」というテーマに限らず、「褒めて育てる」ということに一定の合理性はあるのですが、それを日本人にやると「失敗を嫌う」という日本人の遺伝子が「高い目標の設定を避ける」という風に作用することも指摘されていて、かなり興味深い所です。

 

  さらには割と日本人って多幸感が少ないようにも思えますが、それについてもどちらかというと細く長くを志向してきた日本人の「遺伝子」が作用しているということのようで、ありがちな日本人的な志向の「遺伝子」って、まんまステレオタイプな日本人観のような気がして、ある意味その作用ってスゴイな、とカンドーすら覚える感じでした。