2021年6月に出版されたこの本が早くも文庫化されたのを見つけて、早速手に取ってみました。
文庫版の帯には、「大ベストセラー『バカと無知』の原典!」となっているのですが、心理学的な観点から成功や失敗の要因となるパーソナリティについて分析されています。
心理学の定説として「ビッグファイブ」と言われる「外向的/内向的」「楽観的/悲観的」「協調性」「堅実性」「経験への開放性」というパーソナリティの評価軸があるということなのですが、この本で橘さんは「協調性」を「同調性」と「共感力」に分化させて、「外見」と「知能」をパーソナリティを規定する要素として加えて8つの要素で評価する「スピリチュアル理論」を提唱されています。
橘さん自身、あまりこういうパーソナリティ診断みたいなモノを信じていなかったということなのですが、昨今、SNSへの「いいね!」を分析すると驚くほどパーソナリティの分析と一致するという研究に着目されたということで、この理論の提唱に至ったそうなのですが、実際にこういう理論がトランプ氏がクリントン氏との大統領選における選挙活動の一環として特定の因子をもつ層にアプローチした結果、投票活動に相当な影響を与えたという事例もあったようです。
この理論を見ていると、自己啓発書や成功本にありがちなポジティブ思考が必ずしも「成功」に導くワケではないことを指摘されていることが興味深いところです。
自尊心を上げるためにホメようということもよく言われますが、この本の中で橘さんが紹介している心理学的な実験では、あまり根拠のないことでホメることで、当人が慢心してしまって、却って成績が下がるという結果になったようで、ホメて育てることをあまり妄信してはいけないようです。
結論から言ってしまうと、自分のパーソナリティにマッチしたポジショニングをすることが「成功」への近道だという、ある意味身も蓋もないように見えるモノですが、ある意味正論ではあるなぁ、ということは感じます。