「神社」で読み解く日本史の謎/河合敦

 

 

 河合センセイが「神社」を通して日本史を語るという趣向の本なのですが、通史を語るというよりも、歴史上の人物と神社とのつながりを語られたという感じの内容となっています。

 

 多くの日本人にとって神社というのは、色んな意味で拠り所となる存在であり、受験とかで都合よく神頼みをしたくなるものですが、歴史上の偉人も折に触れて神頼みをしていたようで、独我唯存の権化のイメージもある織田信長ですら、絶体絶命とも言える桶狭間の戦いに臨んで熱田神宮への参拝をしたことで知られ、この本ではそういう偉人たちの神頼みを数多く紹介されています。

 

 中には、徳川家康豊臣秀吉のように、かつての為政者が神として祭られるようなこともあり、また本人は”神”として祭り上げられることは想像もしていなかったであろう乃木希典乃木神社に祭られる事例なども紹介されています。

 

 最終章で靖国神社のことが取り上げられていて、政治家が参拝するために中韓から非難されることがクローズアップされることから、太平洋戦争戦争前後の戦没者が祭られるイメージがありますが、実は西南戦争の頃からの戦没者が祭られているということで、そういう誤解を解きほぐす必要性もあるのですが、著名な人ばかりではなく国家のために命を散らした無名の戦士たちも、英霊としてある意味”神”とされるところに、八百万の神々を祭る日本の信教の特殊性を見る思いがします。