教科書に載せたい日本史、載らない日本史/河合敦

 

 

 日本テレビの「世界一受けたい授業」に時折出演されていて、この人のハナシオモシロいなぁ、と感心させられることの多かった河合センセイですが、この方日本史に関する著作の切り口がバツグンに興味深くてい、『外国人が見た日本史』など立て続けにこのブログでも著書を紹介した時期がありました。

 

 この本は教科書で取り上げられる歴史がテーマとなっているのですが、最初に教科書で取り上げられている歴史の変遷を紹介されています。

 

 ひと頃、聖徳太子厩戸皇子と表記されるとか、鎖国はなかったとか、坂本龍馬は薩摩のパシリに過ぎなかったとか、歴史研究の進展に伴う新発見に翻弄される歴史教科書の様子が話題になった時期がありましたが、こういう変遷を追ったモノは少なかったので、かなり興味をそそられます。

 

 そんな中で一番興味深かったのが、「ぜひとも教科書に載せたい新歴史」と題した章で、それぞれの時代で好まれた色彩の変遷を紹介されていて、時代背景と併せてそういう流れを知ることで、かなり時代の雰囲気を知ることができるんじゃないかと思えて興味深い指摘だと思えます。

 

 また、幕末から明治初期に活躍した外交官アーネスト・サトウについて取り上げられており、そういう少しズレた位置からの幕末~維新史を見ることで、単に明治政府側が作り上げたオフィシャルな歴史観に支配されがちなところから逃れて、より立体的に歴史を見ることにつながるんじゃないかと思います。

 

 やはり河合センセイも、そういう歴史の息遣いというか、単なる知識ではない活きた歴史を学ぶことの重要性を意識されているようで、そういう意味で河合センセイのおっしゃるような歴史教科書が採用されたら、生徒側の学習へのモチベーションも随分上がるんじゃないかと思うんですけどねぇ…