読む力を鍛える/佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんの読書術に関する著書は数多く出版されていますし、このブログで、この一年に限っても『読書の技法』『本は3冊同時に読みなさい』『功利主義者の読書術』など数多く紹介してきていますが、この本は読書の活用法に重点をおいた、新しい切り口の読書法について語られたモノとなっています。

 

 功利主義的な思考が蔓延した昨今では、なかなか教養の底上げをするといった成果やメリットが目に見えにくいことへの取組は敬遠されがちになってしまうようですが、長い目で見ると自分の能力を向上させるには、そういう地道な積み上げが、実は最短ルートになるであろうことを、こういう本を読んでいると改めて認識させられます。

 

 この本のサブタイトルには『教養はこうやって培う』とされていますが、最近の多くの人たちにとっては、そもそも「教養」というモノがどういうものかすらつかみにくいモノとなっているのかもしれないとも思え、まずは教養の線引きといったところから、この本を始められています。

 

 最近はあまり子どもに百科事典を買い与える家庭も減っているようですが、佐藤さんは百科事典の効用について、ここまでが一般的に知っておくべきことで、それぞれの項目について、これ以上の部分は専門的な色彩が強くなってしまうということで、ある分野について知ろうと思えば、百科事典に書かれている範囲がある程度一般的な知識だと思っていいということです。

 

 ではそういう「教養」を如何にして我々が生活の中で活用して行くのかということについて、ヘーゲルの著書をベースに紹介しています。

 

 哲学書を活用なんて言うと、かなり高度なことに思えるのですが、全体としてはなかなか体系的の捉えるのは難しく感じるのはやむを得ないとしても、部分部分では、よく読めば、ああ、そういうことってあるよな!?と思えることが指摘されていて、そういう部分を食わず嫌いをせずに読み取ろうとすることが、第一歩のような気もします。

 

 よく活用してこその読書と言われますが、こういう古典と言われる作品から教訓を抽出できるほど、読解力をつけたいところですが、これだけ毎日本を読んでいても、なかなかそういう実感がつかないところも、また読書の難しいところだとも思えます。