朝日ぎらい/橘玲

 

 

 『朝日ぎらい』というタイトルの本を朝日新書で出版するというなかなか大胆な試みですが、これは朝日出版社からじゃないとその真価が著しく低下するということで橘さん自ら朝日出版社に企画を持ち込んで実現した本だということで、橘さんの大胆さと朝日出版社の懐の大きさがなせるワザといったところなのでしょうか…

 『朝日ぎらい』というタイトルなのですが、別に朝日新聞をディスった内容だというワケではなくて、朝日新聞を代表とする旧来からのリベラルが如何にして攻撃をうけるようになったのかということを始めとして、自由主義的な考えの棲み分けやその周辺の思想との関係を整理されています。

 これまでも橘さんは再三“リベラル”とその周辺の思想について著書で取り上げてこられていたのですが、観念的な内容が多くてなかなか理解しなかったのですが、この本ではつとめて平易な例えを駆使して、非常に理解しやすくなっており、ようやく理解できたという実感が持てました。

 そんな中で、日本において嫌韓・反中がはびこる事態についてのリベラルとの関係や、絶妙に思想的なバランスの上になりたつ「安倍一強」のメカニズムなど、リベラルをキーにすることで非常にスッキリと整理できている気がします。

 これまでも橘さんの著書にはいろいろとウナらされてきましたが、より多くの人に受け入れられる作風に変化しつつある気がします。