2015~2018年にシリアで拘束されたジャーナリストの安田純平さんが拘束の経験と紛争地など「危険地」と言われているところへの取材のあり方について語られた本です。
拘束から解放された当初、日本では「自己責任」論が巻き起こり安田さんに対して激しいバッシングが浴びせられたのを記憶していて、そういう「危険地」に自身の意志で赴くのであれば、国家に救助を求めるべきではないという意見が大勢を占めていたということです。
そういう意見について、個人主義的な考え方を持つ傾向の強い欧米諸国ではあり得ないことだということを欧米のジャーナリストが言及されていて、そういう意見というのは自ら自由や平等という民主主義のベースとなる権利を勝ち取った経験がなく、「与えられた」民主主義故なのではないかという論評をされているということを聞いて、個人的には言いようのない恥ずかしさを覚えます。
実際、大手のマスコミ各社は自社の記者をそういう「危険地」に送り込むことがないだけでなく、かつては「危険地」に赴くフリーのジャーナリストから取材結果を「買って」いたということですが、トラブルに巻き込まれるのを恐れてか、それすら減ってきているようで、「危険地」に赴く日本人ジャーナリストが減りつつあるようです。
ということで、日本のジャーナリズムにおいて危険地報道は外信頼りとなっていきますが、日本人の多くはそれでいいじゃないか!?という論調が主流なようです。
そんな中でこの本の中に登場するジャーナリストが高校生に向けたジャーナリズムに関する授業を行った際に、わざわざあまり関係のないシリアに行ってまで…みたいな意見があったところ、北朝鮮ならどうなのか!?と尋ねたところ、北朝鮮なら日本の利害関係が深いから必要なじゃないか、と答えたようですが、大体の日本人の考えがこんな感じなんじゃないかと思います。
ただ、シリアであっても回りまわって間接的には日本の大きな利害につながりかねない上に、外信もイザとなれば情報をありのままに提供してくれる保証はなく、必要な情報を得ることができないリスクは否定できないということを考えもしない大多数の日本人の考えはやっぱり幼稚だなぁ、と嘆息せざるを得ません…