ジャーナリストという仕事/斎藤貴男

 

 

 先日紹介した作家の林信吾さんとの対談本『ニッポン不公正社会』が興味深かったこともあって、斎藤貴男さんが中高生に向けて職業としてのジャーナリストの在り様を紹介した本があると知って、手に取ってみました。

 

 この本の中で斎藤さんはジャーナリストの役割として「権力のチェック」が最大にして最低限の機能だということを再三言及されているのですが、現在のメディアにおいて、これがかなり心許ないことにも触れられています。

 

 斎藤さん自身、新聞記者に始まって、雑誌の記者からフリージャーナリストという遍歴を経てこられていることから、ジャーナリストとしてかなり幅広い経験をお持ちだということで、この本の執筆者に指名されたのかもしれませんが、ほぼほぼ自伝的な内容でありながら、印刷メディアを俯瞰できるという一粒で二度オイシイというメリットがあります。

 

 当初斎藤さんが勤務された日本興業新聞でも業界紙でありながら、よくジャーナリズムの政官界へのおもねりの温床とされる記者クラブがあって、斎藤さん自身もその効用を認めつつも、どうしてもそこでお世話になっている分、その官庁の問題について取り上げる際に、舌鋒が緩んでしまうんではないかという懸念を示されています。

 

 林さんとの対談本でも触れられているように、斎藤さんはかなり権力に対してキビシ目の姿勢のジャーナリストとして知られるだけあって、それなりに不利益を被ることがあったようですが、そういうジャーナリストの本分としての「権力のチェック」という任務に忠実であろうとされることがその存在意義だという矜持ゆえに、甘んじて不利益を受けているようです。

 

 ただ、安倍政権による締め付け以降、多くの大手メディアが「御用メディア」としての道をまっしぐらで、かつてはトップ10を窺った日本の報道の透明度が60位台にまで凋落しており、中国や北朝鮮のような権威主義国家とそれほど変わらないんじゃ…とする思える体たらくで、斎藤さんがこの本でおっしゃられる、ジャーナリズムの堕落→民主主義の危機というのは、まったく大げさな話ではなさそうです。