機会不平等/斎藤貴男

 

 

 作家の林信吾さんとの対談本『ニッポン不公正社会』を読んで以来、ビミョーにハマりつつある斎藤貴男さんのフリー転身後のマイルストーンとも言える著作を手に取ってみました。

 

 『ニッポン不公正社会』でも触れられていましたが、指導要領の改訂で要職にあった三浦朱門氏や、ノーベル賞受賞者でもある江崎玲於奈氏が、入学前に遺伝子検査をして、能力に応じた教育をすべきだということを、深く突っ込んだワケでもないのに勝手しゃべりだしたエピソードを紹介されていますが、ゆとり教育が問題視されていた当時、そういう優生思想的な思想が政府の諮問機関で堂々と語れていた証左でもあり、コンプライアンスがやかましい昨今から見るとかなりのオドロキですが、政府や官僚などの権威の中では隠然と語られているホンネなんでしょう…

 

 当時、ゆとり教育で公立学校の指導レベルがジリ貧になって行っていたのに対し、おカネがあるところは私立の学校で教育のレベルと維持するということで、明確に教育の格差が生まれ始めていたということで、昨今、その頃に教育を受けた世代が親になり、「親ガチャ」みたいなことが取りざたされるほど、親の教育レベルによるその子供が受ける教育レベルの格差は拡大しており、上記のようなホンネを持つ政官界の下では今後も拡大の一途をだ取っていくことでしょう。

 

 また、この本の出版前後に派遣労働の規制緩和が実施され、非正規雇用が急激に拡大したことも格差の拡大を助長したこともあり、この本では現在の断絶の萌芽を露わにされているということです。

 

 ワタクシ自身、そういう格差の発端は、小泉政権における規制緩和だと思っていたのですが、それ以前からずっとそういう意図がうごめいていたということで、決定打が小泉政権だったということのようで、この国は民主主義でもなんでもなく、政官財の都合により動いているということのようで、橘玲さんが『上級国民/下級国民』など一連の著書で再三語られていた「不都合な真実」はまぎれもない真実のようです。