南海トラフ地震/山岡耕春

 

 

 地震予知連絡会の副会長を務める地震学の研究家の方が語られる南海トラフ地震についての本です。

 

 長らく南海トラフ地震発生の可能性が語られていながら、未だ実現していないのでオオカミ少年的な受け取り方をされている人も居られるのではないかと思いますが、駿河湾から日向灘に至る南海トラフという海溝よりもう少し緩やかな溝のようなところはフィリピン海プレートユーラシアプレートが衝突して沈み込んでいる位置にあり、記録が残っている中では最古で大化の改新のすぐ後の684年に起こった白鳳地震以降概ね百年周期で大規模地震が発生しており、直近では敗戦直前の1944年に発生していることから、時期の特定はできないモノのここ数十年に起こることは不可避だというのが地震学界での常識だということです。

 

 この本では地震津波のメカニズムなどかなり専門的で詳細に解説されていることからなかなか難解なところもあるのですが、それよりも南海トラフのどのあたりで地震が発生したら、どの程度の被害が起こるのかということが地形などの条件を踏まえて、すでにかなり詳細にシミュレーションが行われていることと、地形の変動の監視など現時点で技術でなしうる予知の策も講じられているということで、その割に国民にそこまで周知されているようには思えないのが気になるところです。

 

 特に湾内などさえぎるモノの少ない静岡県の太平洋沿岸において、かなり大規模な津波の被害が見込まれるということで、静岡ではそういうハザードマップ的な情報が周知されているのかもしれません。

 

 ワタクシ自身、2015年は神戸で、2011年は東京で地震に遭遇したこともあって、それなりに自身にはセンシティブなのですが、最近内陸在住だけあって、多少そういう危機感が摩耗しているように思えるところもあるので、イザという時のために、ちゃんと自治体のハザードマップの情報にあたっておかなかければ…と思い起こされた次第です。