新・国富論/浜矩子

 

新・国富論 グローバル経済の教科書

新・国富論 グローバル経済の教科書

 

 

 アベノミクスのことを”アホノミクス”と呼び、安倍政権の経済政策を辛辣に非難することで知られる経済学者の浜さんが、2012年時点のグローバル経済を古典派経済学の理論を通して語られた本です。

 

 浜さんの著作は、多くの人に取って難解な経済の理論を、親し気な語り口で紹介することで知られているようですが、一見親しみ易そうなんですが、必ずしも分かり易いというワケではなく、この本でもかなりコミカルな語り口でグローバル経済を語られてはいるモノの、ロンドンのシティにおける勢力図を、さも周知のごとく語られたりしていて、ちょっと戸惑うこともあります。

 

 なによりも肝心のアダム・スミスの『国富論』なんですが、この本の理論を通して2012年時点のグローバル経済を見るという趣旨で、確かに”神の見えざる手”ということで、自由主義経済っていう、この本のエッセンスを知っている人は少なからずおられると思うのですが、結構ガッツリとその世界観が前提になっているので、ただでさえ経済学の理論的な背景が、ウロ覚えになりつつあるワタクシにとってはなかなか読み解くのはホネでした…

 

 おまけに、リカードの理論も加味されているのですが、ワタクシにとってはリカードなんて比較優位論くらいしか理解していなくて、お手上げでした…

 

 まあ、そんなことを置いておいて、そもそも古典派の経済学と言うのは、限られた経済圏の中での完全市場の形成なのですが、アダム・スミスが『国富論』を書かれた時点で国家レベルだったのですが、その少し前は地域レベルであって、そういう範囲では貨幣の概念すら扱われることもなかったということで、『国富論』では貨幣の役割ひいては金融政策についての考慮は皆無で、実は国家の金融・財政政策が及ばないグローバル経済においては、『国富論』が想定したような完全市場に近いモデルが実現しようとしているんじゃないか、ということを指摘されているんじゃないかと、古典派の理論の理解の行き届かないワタクシには読み取れます。

 

 まあ、正直、かなりガッツリ経済理論をされてきた方でないと十全に理解するのは難しいかも知れませんが、なんとなくそのダイナミズムに触れるのはオモシロいかも知れません。