日本をどのような国にするか/丹羽宇一郎

 

 長く伊藤忠商事の経営に携わられて、社長退任後は駐中国大使も務められた丹羽さんが、今後の日本の在り方を提言された本です。

 

 この本は2019年の出版で、安倍政権下における政治家や官僚のモラルハザードに加えて、企業の経営者たちも含めて、この国の指導層がどこか方向性を見失っているのではないかということを指摘されています。

 

 そういうことに触れられた上で、来るべき地球温暖化南海トラフ地震、AIの進展といった問題について専門家にインタビューを経て、日本の進むべき方向性を提言するという構成を取られています。

 

 ここのところの日本における指導層の迷走について丹羽さんは、日本の在り方の大本である「国是」を見失っていることが原因にあるのではないと指摘されていて、「平和」と「自由貿易」という根本を思い返し、そのふたつに収れんするように今一度方向性を見直すことが必要であると提言されています。

 

 そうした上で、改めて元々の日本の強みである技術力の向上や、その活用の方向性を見直すとともに、人材育成に注力することが喫緊の課題であるとおっしゃっておられます。

 

 おそらくコロナ禍を経て、丹羽さんの提言というのはより重要性を増していると思われますし、ある程度感染の終息が見込まれた折には、こういう改革を軌道に乗せて行かないと、日本はジリ貧になってしまうような気がします。