部長って何だ!/丹羽宇一郎

 

 

 伊藤忠商事の社長を務められ、名経営者のおひとりとして数えられると共に、財界きっての読書人としても知られる丹羽さんが語られる「部長」の在り方です。

 

 「部長」と言えば、ある程度上級に位置する管理職ということになるのですが、丹羽さんのお考えでは、会社の中で、ある事業分野に関するトップの位置づけとも言える立場だということもあって、ある程度経営的なセンスが要求されるということもあり、特に伊藤忠商事のような巨大な会社であれば、経営者とも伍してビジネスを進めていかなくてはいけない立場でもあるので、それなりの覚悟が必要だとおっしゃいます。

 

 ということもあり、部長ともなれば自分が担当する分野についての”経営ビジョン”というものも持ち、それを部下に明確に伝え、しかもそのビジョンが部下が心酔するほどの”熱”が無ければならないとおっしゃいます。

 

 という意味で、部長は「自分と一緒に死にものぐるいになって仕事に打ち込む部下がいるかどうかにかかっている」とまとめの部分でおっしゃっておられますが、この本全体を通して、昭和のパワハラ上司モードを全開にされています。

 

 飲みニケーションあり、深夜残業あり、挙句の果てにはワークライフバランスについて「ライフ=ワーク」とまでおっしゃっておられて、テレワークや「AI」でできないことこそ「部長の仕事」だとまでおっしゃっているのを見て、ああ、これは最近の著書なんだなぁ、と巻末の出版日を見なおした次第です。

 

 最後に「わが仕事人生に悔いなし」とおっしゃっていますが、こんなパワハラ上司が今日存在したら仕事人生を全うすることも無かったでしょうし、ホントに生まれた時代がよかったですねとしか言いようがなく、時代の流れもどこ吹く風といった感じで、丹羽さん程の教養人であっても自らの成功体験の見直しは難しいようですね…