未曾有と想定外/畑村洋太郎

 

 

 「失敗学」の開祖・畑村先生が東日本大震災における津波被害、原発事故から、今後の日本における災害対応の教訓を説かれた本です。

 

 津波編の冒頭で、東日本大震災時の津波被害について「未曽有の津波災害」とよく言われたことについて、どこか責任逃れ的なニュアンスを嗅ぎ取られたようで、「未曽有」というコトバを軽々しく使うべきではなく、歴史上同規模の津波の記録があることもあって、本来そういうモノ教訓にした対応の啓蒙をしておくべきだったのではないかとおっしゃいます。

 

 実際に釜石市の小学生での死亡率が他の年代に比べて著しく低かったようですが、それは先生方が津波があった際には高台に逃げるよう促すことを徹底したことに起因していたようで、逆に避難に躊躇した高齢者の死亡率が高かったこと、その支援者である家族や介護に携わった人を巻き込んでしまったこと、防災に携わった人が任務を優先してしまったが故に犠牲になってしまったことを指摘されいます。

 

 原発事故の「想定外」とのコトバはまぎれもなく「責任逃れ」的な発言だと思うのですが、そもそも「想定」は東電にとってのミッションではなく、本来であれば、どこまでが「想定」範囲なのかを明確にしておく必要があったということなのですが、そういう「想定」すら満足になされていなかったのではないか、ということを指摘されています。

 

 ましてや、新潟県中越沖地震時における柏崎刈羽原発でも同様の事故が発生していたにも関わらず、その教訓が全くと言っていいほど福島では活かされておらず、東日本大震災時の原発災害は純粋に人災であったことが伺えます。

 

 こういう状況になっていまった主要な原因としては、原発の安全性をアピールしようという意識が行き過ぎてしまった挙句、その「安全神話」に当事者までもがダマされたカタチとなり「見たくないものを見ない」といった心情になってしまい、なすべき対策が後手に回ったということのようです。

 

 ただ、日本列島は常に自然災害と背中合わせであり、自然災害は「起こるもの」という前提で対策を考えておく必要があり、自分の目の周りのモノにどういう影響があるのかという想定をめぐらした上で、どう行動するのかということを徹底しておくべきなのですが、まだまだ政府などの認識は行き届いているとは思えないんですけどねぇ…