私は自衛官/杉山隆男

 

 

 1995年出版の『兵士に聞け』が話題になり、ワタクシも結構リアルタイムに近い時期に読んだ記憶があるのですが、かなり人気を博したようで、脈々と「兵士」シリーズとして出版されてきたようで、2017年出版の『兵士に聞け 最終章』まで出版されて一旦区切りがついたということなのですが、女性自衛官について正面から取り上げてなかったということのようで、『兵士に聞け』の女性自衛官版という主旨のようです。

 

 ちなみに、昨年女性自衛官に対する、性的暴行と言っても差し支えが無いと思われるほどのセクハラ告発が問題となりましたが、この本ではそういった側面については取り上げられていません。(念の為)

 

 この本では9人の女性自衛官が紹介されていて、中には看護官や管制官などといったバックヤードの任務の方も取り上げられているのですが、ほとんどが実際に前線に立つ現業自衛官で、訓練の中では屈強な男性自衛官と共に格闘技などのカリキュラムをこなされているということに、言われてみれば当たり前なのかも知れませんが、ちょっと驚きます。

 

 多分、日本でも最たる「男社会」ということもあって、女性への配慮という意味では、最低限なんじゃないかと思わされるようなキビシい状況にあることを紹介されています。

 

 男性自衛官と結婚されている方が多いのですが、当然のごとく同じ任地に派遣されるといった配慮はほぼ皆無で、子どもがいようがどうしようがヘーキで留学の辞令も出るようですし、小さい子どもを基地に連れて行ける以外は、他の企業と比べて圧倒的に劣悪な環境にあるようで、その辺りの苦労を語られてはいるのですが、この本に紹介されている方々は、それが故に辞めようとしたといったことは語られていません。

 

 また、親が自衛官だった人が多いのも印象的で、そういう状況を当たり前だと思っている人だからこそ、そんな苦境をそれほど気に病まずに勤められるのかも知れません。

 

 でも、だからといってこれでいいのかなぁ、という懸念はフツーの環境にいる人は感じると思うんですけどねぇ…